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魔導研究所に残った幻獣は、結局半分にも満たなかった。
それでもダースで数えることはできる。
「ティナ」も、もちろん取り返されていた。
この娘には魔導抽出以上に使い道がありそうだとガストラ皇帝は思う。
彼の目の前には羊水に似た液体が満ちたビーカーがあって、中にはケフカが浮かんでいる。
隣には名を知らない幻獣。一番強そうな奴を選んだ。
1つのビーカーの中でケフカと幻獣は交感し合い、力を分け合っている。
薄く小さい音律があちこちで響いていた。
「ケフカ様の傷は癒えています。もともとそんなに深手でもなかったのに・・・」
シド博士が非難めいた口調で言う。
自分の息子をはじめての実験台に差し出すなど、正気の沙汰ではないといった口ぶりだ。
だが、ガストラはケフカを愛しはじめていた。
「やはり、私の息子だったのだ。」
彼は、あと数ヶ月は杖を使わないと歩けない自分の足を見やった。
腱を斬られたのは自分の不注意のせいだけではなかったと思う。
「お前をもっと強くしてやるぞ、ケフカ。すべての幻獣の注入は可能かシド博士」
「死んでしまいます」
「可能なんだな、やれ」
羊水の中のケフカが身じろぎする。
金髪が雲のように揺れて、うつろな目が皇帝を見下した。
―――なにも見えていないはずだ。
唇がかすかに動き、同じ言葉が繰り返されているのが分かる。
「歌っているのか?何と言っているのか分かるか、博士」
「名前を呼んでいます」
「ティナ?」