落ちていく。

 

だが、皇帝に恐怖心はない。

―――自分はケフカの中にいて、血が絶えることはおそらくないだろう。

彼は少しばかり凶暴になりすぎたかもしれないが、かまわないとガストラは思う。

 

「なぜなら皇帝あなたは!役立たず以下だからだ!」

頭上から聞こえる自分を罵倒する声も、皇帝の耳には頼もしく聞こえた。

 

ケフカの人体実験、セリスの人体実験、さらに多くの実験を重ねた後に、ガストラ自身も自分の体に魔導の力を注入している。

あれ以来自分はほとんど幻獣になってしまったと皇帝は思う。

 

―――死ねば私もまた、魔石になるのだろうか?

―――彼の役に立てるだろうか?

 

皇帝は遠くなっていく魔大陸を見上げながら、息子のために一度も歌ってやることのなかった歌を口ずさんだ。

 


(2008.9.1)



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