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「ぼくは早くオペラ劇場に帰りたいよティナ。君も捕らわれの身かい?」
「あーう?」
ガストラ皇帝はがっかりしていた。
予想通りであった。
「ケフカ様は大変賢い方です。ただ心が優しすぎて皇帝には向いていません」
臣下がズバズバと言う。
「敵のスパイを拷問している所を見せたら気絶して5日ほど寝込みました」
「それはもう聞いた」
ケフカを引き取ってから6年もの歳月が経っていた。
神経が細やかな所はまったく改善されていない。
敵の多いガストラ帝国の後継者となるためには、多少の冷酷さと凶暴さが必要だと皇帝は思っている。
「あのナヨナヨは今どうしている」
「女の子と遊んでいます」
―――まったく!幻獣界からさらってきた幻獣の赤ん坊などビーカーにでも入れておけとあれほど言ったのに!
ガストラ皇帝は怒りのままに息子の部屋のドアを蹴破った。
「ケフカ!」
「あ・・・お父さん。」
「おとうさんはやめろ!何をしているのだ!」
部屋の中では、もういい大人のケフカが女の子におもちゃのピアノを弾いて聴かせていた。
女の子は入神状態に陥り、額から銀色の精神体を分離させている。
皇帝はそれに気付いて心底驚いた。
「それは・・・実験用だぞ」
「・・・かわいそうで・・・」
「そうじゃない、どうやったと聞いているんだ!」
ガストラの剣幕に驚いた女の子が我にかえりグズりはじめた。
銀色の物質は消えている。
「今のは魔導の抽出体だ。シド博士が何ヶ月かけてもまだ完全には抽出しきれていないものを一体どうやって!」
ケフカはガストラを恐れていた。
第一声が大きい。
物心ついてすぐに声楽の訓練を受け始め、完全な旋律に囲まれて来たケフカにとって
不協和音うずまくガストラ帝国での暮らしは苦痛以外の何者でもなかった。
「歌っただけです・・・歌を聴かせただけです・・・!」
ガストラは不肖の息子がはじめて役に立ったと喜んだ。