Aカイン
「いってえ・・・・!」
「がうー」
ちくしょう、あれから何回噛まれたんだ、俺。
なんでこんなお荷物を拾ってきた。
部下の言うとおり、あの時、森の中で殺しておけばよかった。
ダイブイーグルの巣の中から真っ黒でこきたない人の形をした何かが出てきた時の驚きといったら。
アレが本物の人間だと分かったのは、赤ん坊の産着を腰にぶら下げていたからだ。
「・・・この布、年代物ね。捨てましょうか」
産着をトングでつまみあげながらローザが言う。
素手で触ることは断固拒否した。
「いや、セシルが人間らしくなった時、出自が分かるものがあったほうがいいだろ」
おそらく赤ん坊の時に森に捨てられたのだろう。
セシルという名が記された産着を着たまま。
「かわいそうに」
と言いながら、ローザは一定の間合いを崩そうとしない。
首と足を鎖でつないだだけでは安心できないのだろう。
仕方ない。
自分が拾ってきたんだ。自分でどうにかしよう。
俺の屋敷の馬小屋がひとつ、セシルのために開放された。
「とりあえず水浴びが出来てトイレを覚えるまではここだぞ!」
俺は、最悪な生き物を拾ってきてしまったんだ。