ミストで地震が起こったと聞いて、俺は調査に行った。

 

「ゴルベーザ様、この青い騎士、使えそうです。

主に下半身によこしまな思いが渦巻いています」

洗脳マニアのルビカンテが言うが、俺には興味がなかった。

 

崩れた山のふもとに、2人の騎士が重なり合って倒れている。

青い騎士が黒い騎士をかばった格好だ。

 

「面白い。ルビカンテ、黒い方を裸にしろ。」

部下が命令どおり鎧をひんむいていく。

想像以上にぷりぷりした尻が出てきた。

俺はしばらくつついたりして遊んだ後、魔法をかけた。

 

「ウサチャンガ!」

 

黒の騎士が桃色の光に包まれた。

「ゴルベーザ様、今の魔法はなんですか」

「ウサチャンガ・・・ファイガ、ブリザガ、サンダガと並ぶ第4の最強黒魔法だ。

覚えておきたまえ、洗脳などしなくてもこれで2人とも俺の言いなりになろう。」

 

すべて俺様の思惑通り。

目覚めてすぐ、セシルという名の黒い騎士は、己の身の異常に気付いた。

 

「カイン、耳が!耳が頭に生えてきたよ!!」

カインと呼ばれた青い騎士の方は、ぽかんとしたままセシルの頭に生えたピンク色の耳をいじっている。

 

もふもふもふ、ぎゅーっ。

 

「いっ たーーーい!」

「うむ、これはうさぎの耳だ。どうも直生えらしい。セシル、こうすると何か感じるか?」

カインがうさぎの耳の穴に指を突っ込んでかき回す。

 

「あうあうあうあう」

神経も行き届いているようだ。ウサチャンガは成功した。

 

「おい、貴様らよく聞け。」俺は遠くから二人に声だけをかける。

「ウサチャンガは4週間完成魔法だ。はじめの1週間は耳が生え、

次は前歯が伸び続け、3週目にはしっぽ、

4週目に入るとうさぎ並みのリビドーを有しつつ「キュー」としか鳴けなくなるのだ。

それがいやなら全国のクリスタルを持って来い。

2人でがんばれば4週間以内になんとかなるはずだぞ!」

 

声の主を探し、がれきの中でキョロキョロと辺りを見回す2人の男−1人はうさぎ耳ーは、

神妙な面持ちで俺の言葉を聞いていた。

 

「ふん、これで遅くとも4週間後には世界中のクリスタルがここに集まるという寸法だ」

俺は自信満々だった。

「自分にはそんなに上手くいくとは思えません、ゴルベーザ様」

ルビカンテが言う。

「心なしか、あの青い騎士の目が光ったように見えました。

奴の下半身をあなどっては危険です。」

なにを弱気なことを。

「・・・俺のやり方に意見する気かルビカンテ、せっかんだぞ。」

「そ、そんな・・・!」

 

4週間後。

 

「キュー」

セシルはカインの胸に頭をすりつけている。

「もう、仕方ないなセシルったら。

そら、しっぽの部分を切り抜いたぞ、この短パンをはいとけ」

「キュキュー」

 

セシルとカインは幸せに暮らしていた。

 

セシルはここ3週間ほど、やる気のないカインを置いて自発的にクリスタル集めにせいを出していたが、

どこに行っても耳に注目が集まるのが恥ずかしく、しっぽが生えてからはひきこもり気味になっていた。

 

「ゴルベーザ様、次の作戦をどうぞ。」

ルビカンテがしたり顔で言う。

「ぬう・・・」

俺様はどうも作戦下手であるらしい。


(2008.8.9)



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