それは髪を切るためのハサミではなかったので、一刀ごとにじゃりじゃりと不快な音がした。

 

名前のない小さな川のほとりで彼女が髪を切っている。

 

金色の蜜のような束が、惜しげもなく水の中に落ちていく。

 

髪を切るのは罪人の証で、俺もそれに従う。

 

植物が育たない北の最果て。

 

「昼なのに太陽が出てこないわ。なんていうの?」

 

「さあ・・・」

 

一面の青。空と雪。

 

人が住んだことのない土地。

 

足元には金色の川。

 

「行こうか」

 

「うん」

 

裏切り者と逃げた王妃に太陽が当たることはない。

(2008.6.14)



目次に帰る