ゴルとカインの神父生活
最終決戦の後。
「・・・許してくれるはずもないか。今まで散々お前たちを苦しめてきた私だ・・・」
うなだれるゴルベーザの隣にはフースーヤ。
「では、我々は眠りにつく。青き星の平和を願っているぞ。さあ参ろう。ゴルベーザ」
「はい。」
「ちょっと待ったー!」
カインが止めた。
「そんなことでお前の罪が許されると思っているのか。俺と一緒に出家しろ、ゴルベーザ!」
「しゅ、出家・・・?」
全員が固まった。
犯した罪を償うために出家する。
カインの中では実に筋の通った話だった。
「うちの村に派遣されてきた神父さますごいんだ。銀髪だべ、銀髪」
「うちの村なんか金髪だべ、金髪」
田舎の村娘が声をそろえる。
「かっこいいの〜」
バロンから遠く離れた二つの村。
あまりにも小さくて地図にも載らない村は、小さな川を隔てて隣り合っていた。
「なあ、カイン、何も楽しみがないんだが?」
川で石投げをしながらゴルベーザが不満をもらす。
「神父たるもの、楽しみを求めるなかれ」
カインはすでに悟りに近づきつつあるように見えた。
カインの投げた石が、4回バウンドして向こう岸に落ちる。
「おっ、すごいね、カイン」
「まあね〜」
「あの、すみません、神父様たち」
「はい?」
2人が振り返るとそこには、麗しい少年が立っていた。
見習い修道士の格好をしている。
「セ、セシル・・・?」
どちらともなくつぶやいた。
でも、セシルのわけない。
彼は今頃バロン国の元首として多忙を極めているはずだし、こんなに幼くはない。
「ぼくの名前を知ってるんですか?あのう、ぼく、マタマタ村の教会の手伝いをするように言われてきました。」
セシルによく似た少年が言った。
驚いたことに、彼の名もセシルというらしい。
「マタマタ村は俺の教会がある村だ。」
「違うだろ、ゴルベーザ。お前の村はキタキタ村だろ」
「お前の村こそオタオタ村だろうが、カイン」
「エッ・・・じゃあ、ぼく、どこにいけばいいんですか?」
「うちに来なさい」
カインとゴルベーザが同時に言った。
2人ともセシルが大好きだった。
カインは今まで何度セシルをてごめにしてしまおうと思ったか知れない。
ゴルベーザは基本的に絶倫男なので、美少年だったらなんでもいけるクチだ。
ヒマを持て余し気味の神父たちは、交代でセシルと暮らす密約を立てた。
「手を出すなよ、ゴルベーザ。セシルはまだ少年だ」
「フン、おれ様は大人だ。お前と違って」
「きゃああん」
「変な声を出すな、セシル」
「だって、ゴルベーザ神父さま・・・ぼく、苦しいです。そんなに縛らないで下さい」
キタキタ村教会、午後11時。
簡素なベッドに両腕を縛り上げられたセシル。
「ふん、はじめて見たときから分かっていたぞ。お前には悪魔が憑いている・・・肉欲の悪魔だ」
「え・・・?」
「ふふん、身に覚えがあるようだな」
セシルの僧服を脱がせながら、ゴルベーザが囁いた。
「ときどき、自分では止めることができない熱情に駆られる時があるのではないか?」
「は・・・はい・・・どうしてそれを・・・?」
手先が胸元を探っていく。
「やっ・・・」
「こんな刺激で感じてしまうのか・・・悪魔め、なかなか手ごわそうだ」
「神父様、ぼくは・・・ぼくはどうなってしまうのですか?」
心配そうなセシル。
「心配するな、私は慣れている。悪魔を払ってやるから、体を楽にしていなさい」
「は、はい・・・あ・・・神父様・・・そんなこと・・・」
こんな感じであっさりだまされたセシルは、ゴルベーザの毒牙にかかったのだった。
「うふ・・・ゴル様・・・」
とっくに戒めの解かれたセシルの裸の腕は、エセ神父の腰に回されている。
「ふふ、かわいいやつ・・・さて、これからどうするか」
ゴルベーザの思考。
来週からセシルはカインの保護下に置かれる。
アイツがドエロなのは配下だった時代にじっくり味わったオレ様が一番よく知っているわけだが。
アイツの脳内が、親友セシルへの歪んだ愛情で占められていることもよーく分かっている。
いかん。
恥知らずのカインがこの子に何をするか。
ダメだダメだ。
美味いものは独占したい。
「いいか、セシル、よく聞きなさい」
「うん?」
澄んだ瞳がオレを見つめ返す。
「カイン神父は邪悪な男だ。1度ならず2度までも悪魔に身を売った。彼には近づかないようにしなさい。くれぐれも同じベッドで寝るようなことのないようにな」
「はい・・・でも、カイン神父が・・・?あんなに清廉そうな人が」
「人は見た目では分からん。とにかく、気をつけることだ」
自分のことはどこまでも棚に上げて、こんこんと説教をするゴルベーザ。
これだけ言っておけば大丈夫だろう。
ゴルベーザはすっかり安心して眠りについた。
次の週。
オタオタ村教会の台所、午前11時。
「セシル、何の真似だ?」
食堂の椅子には、ロープで縛られたカイン神父。
イモを食うことに夢中になっているスキをつかれ、腰をぐるぐる巻きにされている。
「悪魔祓いをしてあげます」
「は?」
「あなたには悪魔が・・・」
カインは思った。
コイツ、ゴルベーザになんかを吹き込まれたな。
ああ、やっぱり先にセシルを引き取っておくべきだった、油断もすきもないエロオヤジめ。
せっかく忘れかけていた洗脳期間中の出来事が、カインの中によみがえった。
確かにあの時、オレとゴルベーザはそういう関係だった。
抱かれてもやったし、抱いてもやった。
それが決して嫌でなかったことも覚えている。
・・・でも、そんなの関係ねえ。
問題なのは、セシルに限りなくよく似たセシルが、今からとても楽しそうなことをオレにしようとしている事実。
カインはあえてされるがままになった。
「えっと・・・」
僧服のボタンを1つずつ外そうとするセシル。
いちいち不器用でもどかしい。
カインは、兵学校時代の親友を思い出していた。
・・・あのころのセシルは神がかって綺麗だったよな。
隣のベッドで寝ていながら、オレは一体何をしていたのだろう。
ああ、襲っておけば良かった。
今ならできるのだ、あの頃のやり直しを。
「んっと・・・」
「オレを永遠に待たせることはできないぞ、セシル」
ブチッと音を立ててロープが解かれた。
カインは怪力である。
「や・・・っ」
食卓の上に押し倒され、服を脱がされるまでの所要時間15秒。
セシルの白い肩があらわになる。
「ゴルベーザめ・・・あちこちつけやがって」
「魔よけのまじないだそうですが・・・」
点々と広がる鬱血の跡。
「痕が残ったらどうする」
「優しいんですね・・・」
カインが長年の思いを遂げたころ、バロン城王の間。
「どうしたの、セシル?」
「いや、ローザ・・・なんか最近悪寒がするんだ・・・」
セシル王は1つ残った月を見上げながら、ひとり寂しくつぶやいた。
「兄さん・・・カイン・・・今どうしてるんだろう。ぼく、寂しいよ・・・」
2人が意外と楽しく暮らしていたことを知ったセシルもまた後に出家し、真の聖騎士になったという。
(2007.8.25)
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