私はゴルベーザ

弟たちの乗った魔導船は、もう去っただろう

私は今、フースーヤ様に導かれて、月の民の眠る地に着いたところだ

 

「この人たちが、月の民……」

「そうだ」

みな一様に美しく、私と同じ銀色の髪をしていた

水晶に囲まれ、長き眠りについている

罪に汚れた私が、この美しい人達の仲間に入れるだろうか?

 

「あの、ここには女性がいないようですが……」

「気になるか、ゴルベーザ?」

「微妙に」

「うむ、月の民はみな男性体で生まれてくるのだ 繁殖の時期が来ると、より体が強く丈夫な者だけが一時的に女性化し そして子孫を残すようにできている

私も若いころは、何人か子供を生んだものだ」

「なんと……!」

 

「お前の父、クルーヤが青き星に行ったのは、子を産むのが嫌だったからでもある

痛いしな」

「……初耳です、フースーヤ様」

「お前もきっと、いつか女性になれるだろう、ゴルベーザ

初めはみな怖がるが、慣れるとコレがクセになるんだ 

それに、女性体は、再生能力が高く、体をバラバラにされても蘇るくらいだ」

「そ そんな……」

 

セシル、やっぱ、俺、そっちに行ってもいい?

 

 

 

 

 

 

「ゴルベーザ、 ゴルベーザ 起きなさい」

「ん……フースーヤ様……?いいですとも……」

どれくらい眠っていたのだろう

体が重い

 

「青き星の民が、我々と同等の文明を築いた そろそろ対話をしてもよい頃だ」

なんですと……

あれから何千年、いや、何万年が経ったのだろう?

青き星から離れ、宇宙を漂っていた時間が夢のようだ

 

「魔導船2号に乗って行きなさい、ゴルベーザ」

「あの、フースーヤ様、私1人でですか?」

……不安です

「お前は代表にふさわしい 自分の姿をよく見てみなさい」

 

差し出された鏡には、見目麗しい女性が映っていた

長いストレートの銀髪は、かつての私のままであるが

優しげな眼差し

細い腰

ふくよかな胸

 

「これは……」

私だ……私は女性になっている!

「行くのだ、ゴルベーザ……それとも、このまま月で子作りのほうがよいかな?」

月の民の男たちが、物欲しそうな目で私を見ていた

 

私は青き星に降り立った

懐かしい風

すっかり地形は変わっているが……

 

「青き星へようこそ 私はプレジデント神羅 神羅製作所の社長です」

 

若い金髪の男を見ただけで、かつて愛したカインを思い出しドキドキした

カインがこの姿を見たら、なんと言うだろう……

 

 

「今だ!捕まえろ!」

四方八方から黒スーツの人間が飛び出し、私は確保されたのだった

 

「クアッ クアッ クアッ、いい実験体が手に入った」

「よしなさい北条君、彼女が怖がっているではないか」

「そういうガスト博士だって結局実験に使うんでしょーが?」

 

ここはどこかの実験室

私はベッドに縛り付けられ、3人の男に見下ろされていた

「スゴイ……DNAの構造が全く違う……」

「諸君、これは何だと思う?」

社長が言った

 

「クックックッ、ただの宇宙人ですよ、社長

宇宙人自らが、本社ビルのヘリポートに着陸してくれたわけですなァ」と北条

「私は、セトラだと思います 人類の古代種の」とガスト博士

「まあ、どっちでもいい じっくり調べて、会社に役立ちそうなら使え

ああ、マスコミがうるさいから、ソレは2000年前の地層から出たことにしておけよ」

「はい、社長」

 

フースーヤ様、なんか変です

どうして誰も助けに来てくれないのですか?

……まさか私は、先遣隊という名の特攻隊員だったのでは……?

……いや、ダメだ、ダメだ、月の民を疑っちゃ!

 

「ところでお前、名は?」

「……ゴルベーザ」

「全然似合わん、ジェノバにしろ」

 

そして私は、ジェノバになった

 

ふと、フースーヤ様の声が聞こえたような気がした

「どうやら、まだまだ対話は無理みたいだな」



(2007.5.10)





兄さん=ジェノバ説。一人の賛同も得られないのはなぜだろう。
腕が取れてウニョウニョとか、共通点が沢山あると思います。
・・・言えば言うほど、こどく。


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