男同士の楽しい会話・・・のはずだった。
「でさ、その店の女の子が言うわけよ「もー、若ったらおっぱいおっぱい言い過ぎよー」ってー、
あ、その子貧乳なんだ。
でー、俺はー「おっぱいおっぱい言ってなにが悪いんだ、俺はおっぱい星人だ」と、ちゃんと言ったのさ。
したらー、その子が「じゃあ若、聞くけど、おっぱいだけの星とおまただけの星があったらどっちに住む気?」と。」
おっぱいだけの星とおまただけの星だぜ、お前ら。
だから俺は答えたさ「お・・・おまただけの星・・・かな」ってな。
はははは、は。
な、面白いだろ、その子。貧乳だけどな。
はは・・・・は。
夜も更けた小さな町の宿。
食堂にはぱちぱち火のはぜる暖炉と、男たち3人しか残っていない。
絶好の猥談シチュエーションだというのに、バロン人2人はポカンとしたままだった。
「・・・・・おっぱいって、なに?」
セシルが真顔で聞いてきた。
永遠とも思える、間。
「な・・・んだよ、お前、ローザが毎日うるさいくらい主張しているものを見てないのか??」
ますます困った顔のセシル。話についていこうと真剣なのが見て取れる。
まさかOPPAIは全国共通語ではない?
「なあ、カイン、こいつ・・・・どうしよう。幼少期に勉強のしすぎか?」
相棒に助けを求めた。
こいつは見るからにエロそうだ。
「・・・おまたって、なんだ?」
永遠の間。
後の旅の中でバロン王国の性文化を知るのだが。
一言で言うと大変遅れている。
異性に関しては。
結婚までは何も知らないのが常識なのだ。
しかし、その時の俺にとって、このカルチャーショックはデカかった。
「お前ら、なんだよ、その・・・・無垢は。リディアもローザも寝てるんだぞ、盛り上がっていこうぜ」
「むくってなに?」
だめだ。この調子ではクリアまでエロトークもできそうにない。
そう思うとげんなりした。ああ、せっかく女子軍団が寝静まるまでこいつらの戦争話に付き合ってやったのに。
「・・・バロン人が変なのは分かったよ。ムラムラしたときどう処理してるのか知らないけど・・・」
「あ、そういう時はカインに頼むよ」
無垢なる微笑みのままセシルが言った。
「紅茶はミルクティーで」と言うくらいに当たり前の口調で。
「うん、俺達、親友だからな、セシル」
「・・・・どういうことですか?」
頭の中がぐるぐるする。
思考が滝のようだ。
「ぼくたち13歳の時から親友なんだ。どっちからってわけでもないけど・・・」
「寮で同室なら親友になって当然だろう」
「陛下も、ぼく達が親友になることを勧めてくれた」
「騎士たるもののたしなみだ」
「性欲をためこむのは戦いに影響するもの」
「セシルは最近上手になったぞ」
「カインははじめから上手だったよ」
「当然だ。俺は国王陛下にしこま・・・・」
「やめてーーー!みんなみんな大嫌い!タイタンタイタンタイタン!」
気がつくと両耳に指を突っ込んで意味のないことを叫んでいた。
タイタンは来なかった。
代わりに5歳のときにおさまったはずの、ぜんそくの発作らしきものが襲ってくる。
つまりバロンではセフレのことを親友と呼んで・・・おお。くるしい。
「・・・大丈夫か、エッジ?」
肩で息をする俺、落ち着け。
「ねえ、エッジ、苦しいの?」
セシルがそっと背中をさすった。
その手を振り払いたいのに、体が言うことをきかない。
こうなると机にしがみついたまま、発作が去るのを待つしかない。
のどからひゅうひゅうと音がする。落ち着けって、俺。
「こんなに汗かいて・・・・」
近づかないでくれ。
「なあエッジ、お前、最近親友に会ってないんじゃないのか?」
お願い触らないで。
「そうか、かわいそうに。悪いこと言っちゃったんだね。・・・ぼくでよかったら、したげるよ?」
「ああ、それがいい、セシルは最近上手に・・・」
ここで、記憶が途絶えた。
パニックになって、意識が消えたようだ。
翌朝目覚めると、ありがたいことに着衣に乱れはなく、夜中看病してくれたらしいセシルが椅子に座ったまま寝ていた。
ああ、よかった・・・。
以降、俺はゼロムス戦でもぜんそく発作を起こすことなく、つつがなく旅を終えたわけだが、バロン組の前でエロ話をすることは2度となかった。
(2007.12.31!)
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