「もうちょっとこう、そそる顔できないかな〜僕〜」

 

「・・・・・・・・」

 

オシルの副業、児童ソフトポルノ写真の被写体。

 

鍛冶屋夫人が独断で始めたことだった。

 

ベッドの上で服を脱いで言われたとおりのポーズを取るだけの仕事。

 

まだ12歳のオシルにも、自分がなんとなくいけないことをしていると分かっていた。

 

すべては弟のため。

 

死んだ母を、失踪した父を恨んだこともあった。

 

「なんか汁垂らしてみましょうか?」

 

「あ、いいですね、奥さん」

 

「や、やだよ、小母さん・・・気持ち悪い」

 

オシルはそれが何かとても屈辱的なことだと分かっていたが、どうすることもできなかった。

 

全裸に靴下だけを履かされる意味は分からない。

 

うつぶせで上体だけ起こした格好をさせられ、顔に、髪に妙な汁をかけられて、不覚にも涙が出てきた。

 

悔しい。

なんか知らんがとても。

 

「いい!こういう顔が欲しかったんだよ〜僕〜」

容赦ないカメラマンがバシャバシャと撮影していく。

 

「う・・・う」

 

カメラマンを喜ばせるだけだと分かっていても、涙が止まらなかった。

 

「んあ〜にいちゃ〜」

 

ガチャリ。

 

ドアを勝手に開けて入ってくるセシル。

 

「コラ、セシル、入ってくるなと言ったろ、旦那が帰ってきたかと思ったじゃないか、まったく・・・」

 

鍛冶屋夫人がそそくさとセシルを連れ出そうとする。

 

「にいちゃ〜」

 

「アンタの兄ちゃんは、今お仕事中なんだよ。見なよ、いい尻だろ」

 

見るな、セシル。

オシルは心の底から思った。

 

「ちょっと、奥さん、待ってください、その子は・・・?」

 

「あ?オシルの弟だよ。まだ2歳だから需要がないでしょ?」

 

「とんでもない、こんなキレイな2歳児、初めて見ましたよ。ぜひ・・」

 

オシルが飛び起きた。

 

「やめろ!セシルに何する気だ!」

 

何ということはなかった。

カメラマンはオムツの広告写真を撮り始めた。

 

「私、こういう普通の仕事も取ってるんですよ。たまーにですけど大きな依頼もあって・・・。バロンオムツの広告写真は今までで一番大きな仕事なんです。なかなかイメージどおりの美形赤ちゃんにめぐり合えなくて・・・いやあ、今日はツイてる」

 

セシルはカメラマンの呼びかけに応じて微笑んでみせた。

 

全裸にオムツという、いつものスタイルで。

 

オシルは顔面にお汁を垂らされたまま、部屋の片隅に放置されていた。

 

「100万ギルの笑顔だよ、セシル!素晴らしい!おれもこれで一気にメジャーになれるかも・・・!」

 

パシャパシャパシャ・・・

 

「7000ギルも貰えるのかい?」

 

「ハイ、その代わり、今度子供服の広告写真の仕事でも入ったら、またセシルを撮らせて下さい、マダム」

 

「もちろん、ムッシュー」

 

紙幣のやり取りが行われる頃には、オシルはとっくに服を着ていた。

 

放置されたまま、一人自分の部屋で。

 

「んあ〜にいちゃ〜」

 

「寄るな、セシル。今だけは1人にしてくれ」

 

・・・オシルのあられもない写真は1枚70ギル。

 

・・・セシルの笑っただけの写真は1枚7000ギル。

 

オシルの中に、ふつふつと邪悪な感情が芽生え始めた。

 

・・・俺の体は、セシルの笑顔の100分の1の価値なのか・・・・

 

この、弟に対する劣等感と激しい嫉妬心こそが、後のゴルベーザ卿を生み出す源となったのであるが、当のセシルがそのことに気付く日は来なかった。

(2007.8.20)



ゴルベーザの本名は何だろうと考えていた頃に書きました。このころはまさか公式設定が来るとは思いませんでした。セシルの兄なのでオシルにした・・・それだけです。私の中ではこっちがオフィシャル(黙っとれ



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