「痛いってば、そんなにゴシゴシこすらないでくれないかカイン」
ギルバートの悲鳴が広い共同浴場に響く。
「ぼく、こんな所で大勢と入るの初めてだよ・・・」
当然だろう。旅慣れているとはいえ王子だ。
「俺だって王子様だけど、風呂は大勢で入ったほうが楽しいぞう、ギル」
セシルの背中をがしがしこすりながらエッジが言う。
「ねえエッジ、ぼくの背中のコネクタ穴のどれかにカバーがかかってないみたい。なんかしびれるんだけど」
半ロボヒーロー、セシルの訴え。
「ガムでも突っ込んどけ」
長年の親友カインはセシルの扱い方に慣れていた。
ここはエブラーナ郊外の天然温泉。
男4人が一列に並んで背中を流し合っている。
「若いっていいのう」
「うん、若さはいい」
広い湯船のすみっこでテラとフースーヤの気持ち悪い会話。(テラはなんか生きていた)
ふたりはエブラーナの銘酒をちびちびやりながら若い体を堪能している。
「やっぱり金髪は色白だな、じいさんや」
「セシルはすね毛も生えてないのか」
「月の民じゃから」
「あの引き締まったもも」
「ええのう」
「誰が一番でかい?」
「老眼だからよく見えるんじゃないのか、じいさん」
「わし遠くもよく見えんよ。ちょっとストップ唱えてみてくれ」
「えー?しょうがないな」
2分後。
「やっぱアイツだな」
「うん、アイツだな」
「意外じゃったなあ」
「戦闘体勢に入ってみないとまだ分からんがのう」
「・・・もういっぱいやっか、じいさん」
「いいのう、じいさん」
ちびちび。
「セシルーと金髪はできてると思わんか」
「えー?まさか」
「いや、あの腰つきはあやしい」
「目で見て分かるもんか?」
「分かる分かる。尻に指入れてみたらもっと分かるぞ」
「・・・お前、すごいな」
「ちょっとストップかけてみ?」
「またか?それはやばくね?」
「いいからいいから」
3分後。
「ぜってーできてるな、あいつら」
「あんなんで分かるのか、お前」
「うん、少なくとも処女じゃねえ」
「ほう、うちの甥っ子が・・・」
「人のシュミは分からんのう」
「・・・いっぱいやっか、じいさん」
「いいのう、じいさん」
「なあ・・・なんか一人足りなくね?」
セシルの背中の穴にガムを詰めながらエッジがつぶやく。
「なんかお尻がひりひりする・・・どしたんだろ」
半ロボヒーローセシルの訴えは無視された。
「そういえば男ってもう1人いたような・・・」
ギルバートの背中に湯をかけながらカインが考えをめぐらせる。
その時、壁の向こうから声が聞こえた。
「ほら、パロム、耳の裏までちゃんと洗わなきゃ」
「はーい、ローザ姉ちゃん」
「ほら、腕上げて」
「はーい、リディア姉ちゃん」
「お、お姉様たち、パロムは男の子ですわ。ここは女湯・・・」
「いやーね、ポロム。パロムはまだ5歳じゃない。」
「うん、ぼく、5歳」
「そうよポロム、気にしすぎよ」
「へへへ、ポロムはチチがペッタンコだから妬いてるんだよ姉ちゃん。
それに引き換えお2人はよく実っていること」
「やだー、パロムったら、もまないでよ〜」
リディアがカラカラと笑う声。
「あ、あいつ・・・!」
エッジがおもむろに立ち上がる。
「ほんとローザ姉ちゃんの乳首ってぷっくりしてて可愛いよね。ちょっと触っていい?」
「あらまあパロム、お母さんが恋しいの?」
「うん、ぼく、恋しいの。おっぱい吸ってもいーい?ちゅー」
「きゃっ、いやーん」
「今じゃ、パワーをメテオに!」
「いいですとも!!」
男たち全員のパワーがメテオとなって女湯の壁を壊した。
その後のパロムの行方を知るものはいない。
(2007.11.17)
この話、説明書かなきゃ一部分からないとこがあることに気づきました(汗
「暗黒騎士の鎧は皮膚に直接打ち込まれています」という公式設定ありがとうがはじめにあります。
皮膚というのを読み飛ばしたらしく、「じゃああの鎧、月の民の技術だったんだな。骨髄まで達した鎧は生命エネルギーをあんこくパワーに変換するなんかすごいマシンなんだ。つまりセシルはロボだ。」と独り納得したあげく書きました。ごく普通にロボになっていますが、間違っていました。
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